2-3 自動アラートは即時の人間による確認を必要としない

遠隔地や夜間の IT インフラ運用では、障害発生時に必ず人間が即座に対応できるわけではありません。
この前提に立つと、アラート設計で重要になるのは「すぐ人が見ること」ではなく、人が介入しなくてもシステムが一定レベルまで自律的に動き続けられることです。

本章では、自動アラートを前提とした運用設計について整理します。

1. 自動アラート設計の基本原則
1-1. 即時確認を前提にしない

アラートが発生したからといって、人間が即座に ACK(確認応答)を返す設計は、無人運用や夜間運用とは相性がよくありません。

代わりに、

・ログ取得
・再試行
・条件付き復旧

といった処理を自動化し、一定の範囲までは機械的に完結する設計が求められます。
これにより、担当者がすぐに対応できない時間帯でも、サービス停止時間を最小化できます。
自動処理と人間介入の境界を明確にするすべてを自動化すればよいわけではありません。

例えば、

・自動復旧の回数上限
・同一障害の連続発生回数
・KPI やエラーレートの閾値

などを定義し、それを超えた場合のみ人間へ通知するようにします。
こうすることで、

・軽微な障害は自動処理
・本当に重要な事象だけ人が見る

という整理が可能になり、アラート疲れも防げます。

1-2. Critical アラートに対する一案(経験ベース)

私の経験上、Critical なアラートについては、次のような流れが現実的だと感じています。

・発生と同時に詳細ログ収集スクリプトを自動実行
・必要なログをファイルとして退避
・SCP / SFTP などで集中管理サーバへ転送

こうしておくことで、夜間に人が介入できなくても、後から原因調査に使える情報を確保できます。
ただし、これを無制限に行うと、

・ストレージ容量の圧迫
・ネットワークトラフィックの増大

につながります。

実際、バックアップファイル転送時に NFVI 側でトラフィック閾値を超え、インフラアラートにつながったケースもありました。

アプリケーション側で帯域制御できない場合は、

・NFVI 側で QoS やトラフィックシェーピングを設定
・転送時間を低負荷時間帯に寄せる
・分割転送を行う
・一時的にアラート閾値を調整する

といった、インフラ側での吸収が現実的な対応になります。

1-3. OS が自己判断で再起動した場合の考え方

ノード内で OS が自己判断で再起動するケース(カーネルパニックなど)では、

・復旧を優先するか
・原因追究を優先するか

で迷うことがあります。

無人運用や夜間対応を前提にすると、基本方針は:

・OS 再起動
・サービス自動起動
・後追いでログ解析

という 復旧優先 + ログ確保 が現実的です。

原因追究を重視したい場合は、

・再起動前ログの退避
・コアダンプ取得

などを、あらかじめ自動化しておく必要があります。

人がいない時間帯に再起動を止めて解析を優先する設計は、サービス継続の観点ではリスクが高くなります。

1-4. 原因不明時の再現試験という現実

ログだけで原因を特定できない場合、どうしても

・事象を予測
・検証環境で再現試験

というフェーズが発生します。

ただしこの試験は、あくまで仮説ベースです。

・本番と完全に同じ条件は再現できない
・類似事象が起きても同一原因とは限らない

という制約があります。

実務的には、

・再現性を「証明」するというより
・可能性を絞り込み、傾向を掴む

程度の位置づけになります。

この不確実性を前提に、

・自動復旧
・ログ収集
・後追い解析

のサイクルを回す運用設計が重要になります。

2. 設計上の注意点
2-1. アラートの優先度を分ける

すべてを同じレベルで通知すると、本当に重要なアラートが埋もれます。
軽微なものは自動処理、重大なものだけ通知、という整理が必要です。

2-2. 自動処理の履歴を必ず残す

自動復旧やログ収集を行った場合でも、

・何が起きたか
・何を実行したか

は必ず記録しておきます。
後から振り返れることが重要です。

通知経路の冗長化

重要アラートについては、

・メール
・SMS
・チャットツール

など複数経路を用意しておくと安心です。

まとめ

自動アラート設計において重要なのは、

・人が即時対応しなくても動く仕組み
・復旧優先 + ログ確保
・不確実性を前提とした後追い解析

です。

Critical アラートは自動で情報を集め、必要な場合のみ人間が介入する。
原因不明時は再現試験で傾向を掴みつつ、再発に備える。

こうした前提を運用に組み込むことで、無人環境でも現実的に回るインフラ運用が可能になります。

本記事の内容は、次項目に対応します。
Link:IT infrastructure system operation for remote areas(遠隔地向け IT インフラ運用)
2-3 Automatic alerts do not require immediate human acknowledgment
(自動アラートは即時の確認を必要としない)

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