3-2 ピーク処理期間を前提にした負荷評価が行われていること

ITインフラ運用において、システムの安定性が最も問われるのは「平常時」ではなく、
処理負荷が集中するピーク処理期間です。

平均的な負荷状況だけを基準に設計・評価されたシステムは、
トラフィック集中、バックアップやバッチ処理の重複、冗長構成の切り替え発生時などに
想定外の性能劣化や障害を引き起こすリスクを抱えています。

そのため、ピーク処理期間を明確にし、その状態を前提とした負荷評価が行われていることは、
安定したITインフラ運用における重要な確認ポイントとなります。


1. ピーク処理期間とは何か

ピーク処理期間とは、システムにおいて 最も多くのリソースが消費される時間帯やイベント を指します。
代表的な例は以下のとおりです。

・サービス利用が集中する時間帯(業務開始直後、昼休み、夜間など)
・月末・月初・締め処理などの業務集中タイミング
・定期バッチ処理やバックアップ処理の実行時間帯
・大規模リリース直後やキャンペーン期間
・障害復旧後の再処理やデータ再同期

これらは単体で見ると問題がなくても、
複数の処理が同時に重なることでピーク負荷を形成するケースが多く見られます。


2. 評価対象とすべきシステムリソース

ピーク処理期間の評価では、特定の指標だけを確認しても十分とは言えません。
以下のように、複数のリソースを横断的に評価する必要があります。

・CPU使用率(瞬間最大値、継続時間)
・メモリ使用量(スワップ発生有無、キャッシュ圧迫)
・ディスク使用量(バックアップ・ログ肥大化の影響)
・ディスクI/O(IOPS、レイテンシ、キュー長)
・ネットワーク負荷(帯域使用率、再送、パケットロス)

特にピーク時は、CPUよりも
ディスクI/Oやネットワークがボトルネックになるケースが多く、注意が必要です。


3. 設計時の負荷試験結果との比較評価

ピーク処理期間を正しく評価するためには、
サービスリリース前に実施した負荷試験・安定試験の結果を把握していることが重要です。

想定トラフィック量での負荷試験結果
リソース使用率の上限値
応答時間やエラー率の推移

これらの結果と、実運用中に取得したメトリクスを比較することで、

システムが設計通りに動作しているか
想定以上の負荷が発生していないか
将来的なキャパシティ不足の兆候がないか

を客観的に判断することが可能になります。


4. 長時間・定期処理を考慮した負荷試験の重要性

負荷試験は、短時間(1時間程度)の試験のみでは不十分です。
最低限、以下を満たす試験が求められます。

・24時間以上の連続負荷試験
日次バッチや定期処理を含めた試験
ログローテーションやバックアップ処理を含めた試験

理想的には、月次処理や月初・月末特有の処理など、
低頻度だが高負荷となる処理も含めた試験を実施できると、
実運用に近い形でシステムの耐性を確認できます。


5. 冗長構成における切り替え時の瞬間負荷も考慮する

冗長構成(Active-Standby、Active-Active など)を採用している場合、
アクティブ系の切り替え時に瞬間的な負荷上昇が発生する点にも注意が必要です。

切り替え時には、以下のような事象が同時に発生することがあります。

通信セッションの再確立によるトラフィック再送
タイムアウト発生後の一斉リトライ
キャッシュ未反映による再処理負荷
スタンバイ側での急激なCPU・メモリ使用率上昇

これらは短時間で収束する場合が多いものの、
**通常ピークとは異なる「瞬間最大負荷」**を発生させる要因となります。

そのため、負荷試験では、

高負荷状態を維持したままの切り替え試験
切り替え直後の各リソースの瞬間値測定
切り替え後に安定状態へ戻るまでの時間確認

といった観点を含めることが望まれます。


6. よくあるダメな評価例

ピーク処理期間を考慮していない評価では、以下のような問題が見られます。

平均CPU使用率のみを根拠に「余裕がある」と判断している
ピーク時のディスクI/Oやネットワーク負荷を確認していない
バックアップ・バッチ処理とサービス負荷の重なりを考慮していない
冗長構成の切り替え時の負荷を評価していない
負荷試験結果と実運用データの比較を行っていない

これらは、障害が発生するまで問題に気づけない典型例です。


まとめ

ピーク処理期間を明確にし、その状態を前提とした負荷評価を行うことは、
安定したITインフラ運用における基本事項です。

平均値ではなくピークを基準に評価する
複数のシステムリソースを横断的に確認する
負荷試験結果と実運用データを比較する
長時間・定期処理・切り替え時の負荷を含めて評価する

これらを継続的に実施することで、
設計通りに動作し続けるシステムかどうかを客観的に判断できる運用体制を構築できます。

本記事の内容は、次項目に対応します。
Link:IT infrastructure system operation for remote areas(遠隔地向け IT インフラ運用)
3-2 Peak workload periods are identified and Load assessment is carried out
(ピーク処理期間を前提にした負荷評価が行われていること)

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